「利用する、便利じゃん」の末路としての小選挙区制と安倍政権

小選挙区制について話題になっていたので書く。
amon.hatenablog.com
 最初に言っておくが、ここでid:D_Amon氏が言っていることは嘘ではない。自民党はずっと小選挙区制をやりたかった。根拠が新日本出版社の書籍だからといっても本当のことだからしょうがない。問題はなぜ自民党政権の時ではなく、細川連立政権の時に小選挙区制になったのか、ということだ。

 なんでD_Amon氏がちゃんと書かないのか分からないが、当時は小選挙区制に賛成しないのは頭の固い守旧派みたいな雰囲気ができあがっていた。背景にあったのはリクルート事件や佐川事件などの金権政治批判だ。また、族議員や派閥政治という自民党の問題も大きく批判されていたという背景もあった。そこで出てきたのが政治改革の議論だ。金権政治批判は、中選挙区制は不正の温床だし、政権交代ができにくい。だから政権交代できる選挙制度にしよう! そうだ!小選挙区制だ。これで民意を「集約」することにより政権交代ができるようになり、イギリスやアメリカのようなスマートな二大政党制になれる!という選挙制度改革の話が主流になってしまった。ちなみに政党に直接税金を分配という政党助成金もこのときに、金権政治批判の文脈ででてきて実際に成立しちゃった制度だからね。

 こうした議論は小沢とか自民党内から出てきて、自民党は分裂、宮澤政権は解散。自民党から出てきた小沢、細川(元自民党)、武村とかの連中に社会党などの野党も同調して細川連立政権をつくった。この政権が自民党選挙制度で妥協したのは、そもそも自分たち(特に自民党から来た連中)も小選挙区制導入を主張してたってことと、政治改革関連法を成立させないと政権維持が難しかったから。反対する人間を守旧派呼ばわりして黙らせようとするすごいイメージ戦略が横行していた。今の立憲民主党とかにいる連中はこの系統。政治学者で露骨に旗振りしていたのが山口二郎。きちんと反対している人間は少なかった。政党だと共産党くらい、社会党自民党の一部にもはっきりとした反対者はいたけど少数派。ジャーナリストでちゃんと言ってたのは朝日の石川真澄が印象に残っているくらい。全然少数派でした。

 死んだ山花貞夫とか今、立憲民主党にいる赤松広隆など、社会党にいた人間なんかテレビで反対論をはなす共産党議員を嘲笑してたくらい。まあ、ひどかったわけです。今、この辺りの連中は「アベ政治を許さない!」とか言ってる訳でしょう? 安倍政権がひどいのはそうだけど、オメーらがアシストお膳立てして作った制度でこんなことになってるんだっつーの。安倍政権の問題とされる党中央への権力の集中とか、実際の支持率以上の得票っていうのは小選挙区制の問題として当時もとっくに指摘されてたのに当時聞く耳持たなかったからね、あいつらは。その反省全然なさげなのはすごい問題だと思います。うろ覚えだけど当時の政治状況を興味深く見ていた人間としてはこういう印象です。

ロージャオモーをもつブタさん
肉夾饃(ロージャオモー)ぶつけてやりてぇ
 ずっと自民党がやりたかったことが、「改革派」の連中の助けを借りてなんとなく新しい政策みたいイメージを獲得して本当に成立した。というのが事実関係として最低限抑えておかなければならない背景なんじゃないかな、と思います。この事実から権力者がやろうとしていることを「利用」して、なにかを成し遂げようとするということには、とてつもないリスクがあるんだ、という教訓を得られないと駄目なんじゃない?っていうのは、最近の「てんのうへーか万歳リベラル」を見ていても思うことですね。

2019/11/24
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