台風の中での新聞配達。「新聞同人の矜持」とは?新聞労連ってなにしてるの?

毎日新聞グループホールディングス取締役の小川一氏のツイートでのやりとり。この台風の中でも配達前提の新聞を発行していることについて、突っ込まれている訳だが。




 ここで突っ込み入れてる人とは、私は政治信条まるで違うのだけれども、それでもこの小川一氏の開き直りには心底おどろかされる。新聞発行本社は販売店とは別会社なので関係ないのだ、と言わんばかり、というか言ってるわけだ。この場合は特に『毎日新聞』の専売店ではない、というニュアンスで言っている。合売店でもどこかの専売のついでに他紙の販売をしている。専売店か合売店かというのはあまり意味のある返しではない。そもそも、配達・販売に対するリスクを販売店に丸投げする構造がコンビニのフランチャイズと構造が似てるよねぇって言われているわけで、新聞業界全体の問題なわけである。まあ、小川氏の場合、この辺りをとぼけて答えている辺りが悪質度が高いと言えるだろう。実際問題として販売店側に対して発行本社が優越的地位にあることは押し紙問題などでも度々指摘されていることである。その発行本社が新聞を発行すると決めたらどうなるか?火を見るより明らかである。私の住む地区は避難勧告が出されていたが、『朝日新聞』の朝刊が定刻配達されていた。大手紙が休刊を決めたという話は聞かないのでどこでも同じような状況だったのであろう*1。なにもなかったから良かったとは言え、なにかあったらどうなるか?せいぜい販売店が責任をとって終わりだろう。休配を決めた販売店があるとは聞いているが、発行された新聞を休配にするという判断を配達店に丸投げしているという構造自体が問題だ。
 新聞配達がとても危険を伴う仕事であることは、厚生労働省労働災害統計*2を見れば、毎年死亡者を出していることからも明らかだ。自分も配達員時代に重大な事故を身近で数件経験したことがあるほどだ(奨学生が足を失うような事故もあった)。各地の労働局から様々な注意喚起もされている。*3そんな危険な仕事を台風の大雨、大風のなかでおこなわせることの問題点を、言われなければ分からないのだとしたら、ジャーナリストは辞めた方がいい。政府の広報しかできんでしょう。しかし、小川氏のような経営側の人間がこのような放言をするのは一歩譲って致し方ないが、新聞労連は一体この問題をどのように考えているのだろうか。新聞労連の元幹部を何人か知っているので販売店の労働環境について何かやっていたのか聞いたことがある。「チームを作って対応してた」など歯切れが悪く、モゴモゴ言っていたが、ほとんど何もやっていなかったのであろうなぁ、という印象であった。今からでも遅くはないので、少なくとも台風の時ぐらいは発行本社で休刊を決めるよう求める位はしていただきたいものだ。自分たちの媒体に関係する労働者の労働安全に興味がないようなジャーナリストやジャーナリズムにいかほどの価値があるのか。ぜひ自問していただきたい。

*1:産経新聞は夕刊がない

*2:anzeninfo.mhlw.go.jp統計に出てきているのは多分氷山の一角なのではないかなぁと現場を見ていた人間としては思う。

*3:PDF注意。新聞販売業における労働災害防止対策https://jsite.mhlw.go.jp/tochigi-roudoukyoku/library/tochigi-roudoukyoku/sonota/anzen/anzen-leaf-shinbunhanbai.pdf